Preservation of pulp

歯髄保存治療とは

近年では、歯の神経の状態により、それを取り除くことなく保存することができます。
つまり、虫歯が深くなって神経にまで到達してしまったとしても、ズキズキする痛みがなければ、今までのように全部歯髄をとらなくても済む様になったのです。但し、これらの治療も、顕微鏡下で拡大し、ラバーダム防湿をすることが前提条件となります。

歯髄を残す意味

歯の神経・血管がある部分を指す「歯髄」。歯髄は歯にかかるさまざまな刺激を感知するほか、虫歯菌に抵抗する免疫細胞が持つ防御機能などによって、歯を守る役割を担っています。

歯の中の神経をとってしまうとその後の治療が複雑になり、再治療の頻度が高くなる傾向があり、歯根破折や根尖病変につながる危険性も高まります。
つまり、歯髄を失うことは歯の寿命を縮めることに直結しているのです。

虫歯が深くなってしまっても、アペキソジェネシスという考えのもとに、以下の図に示した通りに施術していきます。

  • 神経に近い虫歯

  • 虫歯を徹底除去

  • セメント充てん

  • 新たな硬組織完成

これには、虫歯におかされた歯質を、取り残しなく徹底的にマイクロスコープ拡大下で施術することが大切です。

歯牙破折

歯牙破折(しがはせつ)は、虫歯・歯周病に次いで歯を失う原因の第3位に挙げられています。文字通り歯が折れてしまうことを歯牙破折といいます。歯の見える白い部分である歯冠が割れてしまうことを歯冠破折(しかんはせつ)と呼び、歯ぐきの中にある根の部分が割れてしまうことを歯根破折(しこんはせつ)と呼びます。
歯冠破折については、詰め物や差し歯タイプの被せもの等で治すことができます。しかし、歯根破折についてはそうではありません。破折の状態が比較的小さい場合には治せる余地もありますが、そうでない場合の歯根破折は抜歯になってしまいます。歯根破折は表から見えない歯ぐきの中で起こるため、なかなか気づきにくく重症化してしまうケースが多いのです。

歯牙破折の主な原因

  • 01.歯髄の喪失

    根管治療で歯髄を取り除いた歯は、すでに歯を削る治療がくり返されていることが多く、破折を起こしやすくなります。

  • 02.歯ぎしり・食いしばり

    歯ぎしりや食いしばりのクセがあると、咬む力のバランスが偏って、一部分の歯に過度な負担がかかってしまいます。

  • 03.金属の土台

    重度の虫歯治療で被せ物を装着する際には、土台を構築する必要があります。その土台が金属製の場合、天然歯より硬い金属が歯根に負担をかけて破折を招きやすくなります。

  • 04.外傷

    転んだり、何かにぶつかったりする衝撃でももちろん起こります。身体をぶつけ合うような激しいスポーツをする場合には、スポーツ用のマウスガードを装着するなどし、歯や歯根を守ることが大切です。

マウスガード

歯牙破折の治療

当院の考え

~歯牙破折イコール即抜歯ではありません~

当院では患者様の将来を考え、少しでも可能性があれば抜歯せず治療する選択をおすすめしております。
歯牙破折のなかには最適な治療を行えば抜歯をせずにすむケースが少なからずあります。
最適な治療を行うためには、精密な処置が欠かせません。ですから、歯牙(歯根)破折に対する治療はマイクロスコープを用いる事が基本となります。

※ケースによっては接着できず、抜歯を余儀なくされることもあります。また、治療費は保険外となるため、自由診療で全額自己負担となります。

歯牙破折治療の流れ

診査

破折線の確認 ⇒ 肉眼ではなくマイクロスコープによる拡大診査(8~30倍)
どこでどのように割れているか?見落としはないか? ⇒ CBCTレントゲンで撮影診査

原因の診断

どの疾患でも同じですが、原因が解決できれば治療が成功に近づきます。マイクロスコープとCBCTの診査結果を基に診断を行います。診断の際ポイントになるのは大きく以下の4つです。

  • 咬み合わせは大丈夫か?(いつも同じところで咬んでいないか)
  • 金属で作られた土台が歯の中に入っていないか?
  • 虫歯が根の中にどれだけ進行しているか。歯が柔らかくなっていないか?
  • 咬みしめぐせ、歯ぎしりはないか?
接着

診査と診断の結果、問題なければいよいよ接着です。接着には1回法と2回法があり、どちらもマイクロスコープ拡大視野下で破折部位の感染歯質をしっかりとりきることが成功の秘訣です。
2回法の場合、破折部位の感染歯質を取った後接着し、一度歯を抜いて外側を接着後再植、あるいは歯肉手術をして外側を接着します。

歯牙破折治療症例紹介

当院で行った治療例をご紹介致します
※記載している治療例は、全ての患者様に対して効果を保証するものではありません。

症例①

通院回数1回(経過観察期間1年)治療時の年齢39才
かかった治療費130,000円治療方法意図的再植法

歯根破折の為「咬むと痛い」を主訴に来院。大きく縦に割れている歯牙の中と外を接着し2カ月で歯をかぶせなおして終了となります。

完全に割れていてもマイクロスコープを使えば接着できます。

自家歯牙移植

歯を失う、または失った部位に、ご自分のお口の中にある他の利用できる歯を移し変える治療で、失われた奥歯の部位に親知らずを利用する場合がほとんどです。
ただし、治療の成功には移植する歯の歯根膜の状態が大きく影響を及ぼしますので、自家歯牙移植の適応症は非常に限られてしまいます。言い換えると、親知らずがあったとしても、必ずしもできる治療ではないということです。さらには、歯根膜の状態は、抜いてみなければ分からないことが多く、術前には不確定な要素が多いことも、デメリットとしてあげられます。しかし、現在ではCBCT診査ができることで、かなり高い確率で診断ができるようになりました。

再植とは

根の先にウミの袋ができて通常の根管治療では治療できない場合、いったん抜歯して根の先の治療を施してから元の位置にもどす(再植)処置を「意図的歯牙再植」といいます。
また、虫歯を治療してもかぶせることができないような場合、通常は抜歯しブリッジを作りますが、両側の歯を削りはめるので健康な歯もそのために傷みやすくなり自身の歯のように強く噛むこともできません。意図的歯牙再植技術を使うことでブリッジにしなくても済むようになります。自身の歯をすぐにもどしますので、歯根膜も傷がつかず、時間はかかりますが元のように歯は根付きます。
ただし、歯の根が2つ以上に分かれて抜歯しにくい歯では施術できないことがあります。

再植症例紹介

当院で行った治療例をご紹介致します
※記載している治療例は、全ての患者様に対して効果を保証するものではありません。

症例①

通院回数4回(経過観察期間 6か月)治療時の年齢64才
かかった治療費170,000円治療方法根管治療及び意図的再植法
ジルコニアクラウン装着

左上の一番奥の歯がグラグラで他院で抜歯を勧められるも抜歯もインプラントも嫌で当院に来院。マイクロスコープを使用した根の治療と、根の表面にこびりついた赤黒い歯石をとって再植保存。
一般的な根管治療で治らない膿疱も切除して再植することにより保存が可能です。

症例② 大きな歯根膿疱除去後 再植

通院回数4回(経過観察期間 6か月)治療時の年齢32才
かかった治療費130,000円治療方法意図的再植法

根管治療だけでは治しきれない、膿疱に対しては意図的再植法が有効な事がよくあります。

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